えほんのいずみ

絵本「ようちえんいやや」のあらすじや随想

 この絵本について―初めての親離れ

作・絵:長谷川善史

出版社:童心社

出版社の対象とする読者年齢 2・3・4・5歳~

出版年月日:2012年2月12日

定価:1,430円(本体1,300円)

 
 はじめに


   幼稚園や子ども園、保育所などに入園したてのお子さんの気持ちが、手にとるように

   わかる絵本です。子どもだけでなく、その時期のお子さんを持つ親御さんにとって

   も、大きな励ましが得られるでしょう。

   人気の絵本作家・長谷川善史氏の作品は『おへそのあな』『おじいちゃんのおじい

   ちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』(以上BL出版)『ぼくがラーメンたべてる

   とき』(教育画劇刊 日本絵本賞受賞/小学館児童出版文化賞)『てんごくのおとう

   ちゃん』(講談社創業100周年記念出版の絵本の1冊)その他多数。

   
   
 あらすじと随想


   表紙絵の男の子の何と豪快な泣き顔でしょう!

   それだけでなく、たけし君やまなちゃん、つばさ君、ののほちゃん、しゅうま君、い

   くみちゃんなど大勢の泣き顔にあふれています。

   みんな、「ようちえんいくのいやや。ようちえんいくのいやや。ようちえんいくのい

   やや-!」と、泣いているのです。何故、いやなのかといえば、“園長先生にあいさ

   つするのがいややー”“いちごが好きやのに、ももぐみだからいややー”“わたしの

   げた箱が一番下やから、いややー ”などと、理由は千差万別。

   でも、そのような理由で、こんなに一生懸命泣けるものでしょうか!?

   子どもたちは、幼稚園が嫌いな訳ではないのです。

   本当の理由が明かされる、感動的なフィナーレは、是非絵本でご覧ください。

   特にお母さんの心にジーンと響くでしょう。

   表紙裏の見返しで泣き顔だった24人の子どもたちが、裏表紙の見返しでは24人全員笑

   顔になっていることも、読者をうれしい気持ちにさせてくれます。


   
   
 随想とまとめ


   多くの子どもたちが体験する幼稚園・保育園に入園したての頃の不安とさびしさ!

   子どもにとって、初めて親と離れて過ごす時間は、自立への試練のようなものでしょ

   うか。でも、本書が、子どもにとって真剣なテーマを扱いつつも、どこかユーモラス

   なのは、作者の、「子ども」という存在への深い理解と畏敬の念、あふれる愛、また

   文章が本音の伝わりやすい関西弁であるからかもしれません。

   本書を通して、一人ひとりの子どもたちに、“頑張れ~!”と呼びかける作者・長谷

   川善史さんの温かい声援が聴こえてきます。


   

   私事ですが、昔、うちでも娘と息子が4歳で、幼稚園の年中クラスに入りました。

   娘の方は入園当日から幼稚園が大好きで、毎朝、喜々として出かけたのです。

   しかし弟のKは、しぶしぶ母子分離をして入園したものの、幼稚園から帰ってくると

   毎日「ただいま~」と言う代わりに「明日は幼稚園、行かない!」と言いました。

   ある朝、「幼稚園、行きたくな~い」と言うので、「それじゃ、幼稚園の門のところ

   まで行ってみようか。先生も待ってるよ」と言うと、「先生、意地悪だもん」と言う

   のです。

   「どうして?」と聞くと「ママに会いたいって言っても、会わせてくれないから」と

   言われて、グッときました。

   私自身も幼稚園に入園したての時、新しい環境に慣れにくく、大好きな祖母と離れる

   のが嫌で大泣きし、登園から降園まで約一か月間、ずっと祖母に付き添ってもらった

   ので、Kの気持ちがよくわかりました。

   しかしKは、嫌と言いつつも、泣くことはなかったので、大丈夫そうでした。

   「それじゃ、幼稚園まで一緒に行って、先生に『おはよう』って挨拶して、シール

   貼って帰ってくれば・・?」と提案するとしぶしぶ承知しました。

   でも、幼稚園へ行けば行ったで、先生にごっこ遊びに誘ってもらったり、友だちと遊

   ぶ面白さにも惹かれ、笑顔も出てくるのです。

   やがて一ヵ月経つ頃には、Kも自分の幼稚園が大好きになっていました。


   

   母子分離の度合いは、子どもによって違うと思いますが、やがて新しい環境に慣れて

   不安も薄れ、友だちと一緒にいるのが楽しいとがわかれば、「ようちえん いやや」と

   は言わなくなるようです。


   

   子どもによっては、入園したての頃、幼稚園へ行きたくなくても、なかなかその気持

   ちがはっきり表現できない場合があるでしょう。でも、この絵本によって、「ようち

   えん いやや」と明確化され、子ども自身の気持ちが楽になることもあるようです。

   しかし迫力ある絵の泣き顔に、逆に不安が助長される場合もあるかもしれないので、

   お子さんの様子を見ながら、読み聞かせてあげてください。

   本書を小学生対象に読むと、「アハハ、小さい子はこうだよね~!」と、幼稚園に入

   園したての頃の自分の気持ちなど忘れて、大笑いする子もいます。その成長ぶりがわ

   かって、面白いところでもありますね!


   
   

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