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絵本「とびっきりのおむかえ」のあらすじや随想

 この絵本について―おじいちゃん、きっと
               お迎えにきてくれるよね!

作:二コラ・チンクエッテイ

絵:ウルスラ・ブッヒャー

訳:やまねかずこ

出版社:きじとら出版

出版社の対象とする読者年齢:3、4歳~

出版年月日:2016年2月

定価:1,320円(本体1,200円)

 
 はじめに


   本書は、主人公が、幼稚園へお迎えにきてくれるおじいちゃんを今か今かと待ち望

   み、子どもらしい想像をふくらませる絵本です。

   おしゃれでダンディなおじいちゃんもすてきです。

   第20回いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)受賞作。

   作者の他の作品には『ラファエロ 天使に愛された画家』(西村書店)もあります。

   
   
 あらすじと随想


   主人公は幼稚園児のジョバンニ。

   降園時には、皆、家の人がお迎えに来てくれますが、ジョバンニのお迎えのおじい

   ちゃんは誰よりも遅くて、いつだって最後。

   ジョバンニはひとりぼっちでさびしくなり“おじいちゃんのお迎え、 まだかなあ。

   びっくりすることがあるって言ってたけど、それは何?”と思いめぐらしました。


   

   すると彼の前に現れたのは、おじいちゃんと目がそっくりな猫。

   “きっと、これが おじいちゃんの とびっきりの びっくりだ。おじいちゃん、猫に変身

   したんだ!”

   でも、違いました。

   次に現われたのは、犬。

   毛のモシャモシャが、おじいちゃんのあごひげにそっくり。

   でも、やっぱりおじいちゃんではありませんでした。

   次々に動物が現れたけれど、どの動物も違っていました。

   だんだん心細くなってきて、ジョバンニの目にはうっすらと涙が浮かび、もう、泣きそ

   う!その時、現われたのは・・・?

   お迎えが遅かった理由もわかりました。

   子どもたちを限りない想像の世界へ連れていってくれる、とびっきりびっくりなお迎

   えのお話です。

   おとなの皆さんも、画家ウルスラ・ブッヒャーさんの美しい色彩、すてきなデザイン

   の絵に、ワクワクしながらフィナーレの感動が味わえるでしょう。


   
    
 随想とまとめ


   私もこの絵本のおじいちゃんのように、孫息子ミッチ-の保育園へお迎えに行ったこ

   とがあります。彼が2歳で別の保育園へ移ることになり、4月の「慣らし保育」の

   時、約1週間、毎日お迎えに行ったのです。

   ミッチ―は人懐こく、新しい人や環境に馴染みやすいほうだったので、すぐに慣れる

   だろうと思いましたが、初日の朝、母親が転園先の保育園へミッチ―を送って行く

   と、まだ慣れていない園に入るのを嫌がったと聞いたものですから、大丈夫かなと心

   配でした。


   

   というのは、幼児期の私自身が、激しい人見知りだったからです。

   はるか60年以上も昔のこと、幼稚園に入園したのに、祖母と離れられずに大泣きした

   ため、祖母は登園時から降園まで毎日、私に見える幼稚園のどこかに1か月間もずっ

   と居てくれました。

   1歳半で生母を亡くし、その後、祖母と片時も離れずに5歳まで過ごした結果かもし

   れませんが、幼稚園が事情を理解してくださったためか、無理に引き離されるような

   ことはありませんでした。姿が見えないと私が泣き止まなかったので、祖母は行進や

   遊戯の時も一緒に行動してくれました。

   しかし、入園後1か月ほどした時、私は「おばあちゃん、もう一緒にいなくてもだい

   じょうぶだから、帰って!」と言ったのを覚えています。今思えば、幼稚園に一緒に

   居てくれてありがとう!とも言わず、ずいぶん残酷な言葉だった気がしますが、祖母

   も先生も、私が自分からそう言い出すのを待っていてくれたのかもしれません。

   そのような体験があったので、ミッチ―の転園の「慣らし保育」もゆっくり進めてあ

   げたい気がしました。


   

   しかし、最初の2日間は10時半にお迎え、次の2日間は給食前に、やがて最後はお昼

   寝後にという約1週間かけての保育時間の延長を、ミッチ―は無理なくクリアし、幼

   児期に人見知りの激しかった私を驚かせました。

   それでも、保育園へ迎えに行った私を見つけ、「おばあちゃん!」と走ってきて、と

   びっきりの笑顔で迎えてくれた様子を見ると、本書のジョバンニがおじいちゃんのお

   迎えを心待ちにしていたのと同じ信頼で私を待っていてくれたことがわかり、うれし

   かったものです。

   子どもがお迎えを心待ちにしている降園時は、おとなにとってもかけがえのないうれ

   しい再会の時でしょう。色々なケースがありますが、多くは、子どもが初めて養育者

   から離れて自立に向かう乳幼児期だけの、とびっきり感動的な時間なのかもしれませ

   ん。


   
   

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