えほんのいずみ

絵本「ねこのセーター」のあらすじや随想

 この絵本について―愛すべきだらしない主人公が、
                      かわいい

作・絵:及川賢治&竹内繭子

出版社:文渓堂(復刻版)

出版年月日:2016年3月24日
(学研プラス刊の「おはなしえほん」は2006年12年1日が初版)

定価:1,430円 (本体価格 1,300円)

 
 はじめに


   本書の作者は、及川賢治&竹内繭子ご夫妻のユニット“100%ORANGE”です。

   イラスト、広告、漫画など、幅広い分野で活躍されていますが、絵本では『よしおく

   んがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』(岩崎書店)が第13回 日本絵本大賞

   を受賞。他にも『ぶぅさんのブー』(福音館書店)、『いっこさんこ』(文渓堂)な

   ど多くの作品があります。

   
   
 あらすじと随想


   主人公は、青いセーターを着たぶちねこです。

   しかし、寒がりねこの青いセーターは、ぶかぶかでぼろぼろ。おまけに大きな穴があ

   いていました。


   

   ねこの仕事は、毎日、どんぐりに帽子をかぶせるという内職。

   でも、どのどんぐりも、帽子をかぶせられる時に小さな悲鳴をあげるので、ねこは、

   その度に「はい、こんにちは」などと一人ひとりに挨拶をしてあげました。

   ところが、飽きっぽいので、どんぐりに三つ帽子をかぶせると、もう面倒くさくなっ

   て仕事を怠け始めるのです。

 
   

   しかし、自分の夕飯の時間はちゃんと守りました。

   ただ、せっかちなので、歩きながら缶詰を食べたり牛乳を飲んだり、大変おぎょうぎ

   が悪いのです。

   そこで、どんぐりたちは、“あながあいてるよ あながあいてるぞ ねこのセーター

   あながあいてるな・・・あなのなかには なにが あるんだろう”

   などと、彼をばかにして歌いました。


   

   するとねこは急に恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしながら泣いたのです。

   それからセーターを脱ぎ捨ててふとんにもぐり、ふて寝してしまいました。

   しかし、朝になると・・・。


   
   
 随想とまとめ


   本書の主人公は頑張り屋でも努力家でもなく、むしろ正反対なタイプといって良いで

   しょう。

   そのだらしなさの象徴といえるのが、ぶかぶかでぼろぼろ、大きな穴が二つもあいて

   いる青いセーターかもしれません。

   しかしねこは、そのセーターをばかにされると、恥ずかしがって泣き出す、繊細なと

   ころもありました。
 
   それでも捨てられないのは、このセーターに愛着があるからでしょう。スヌーピーの

   コミックに登場するライナスの毛布のように、着ていると安心するのだと思います。


   

   そんなねこですが、仕事では根気がないのに、どんぐりたち一人ひとりに言葉をかけ

   てあげる優しさも持っていました。

   それに、どんぐりにばかにされ、泣いてふて寝しても、朝になると元気に早起きする

   のです。朝食の後にはいつも、“今日は良い天気だね”などとのん気に独り言を言い

   ました。そして、またお気に入りのだらしないセーターを着て・・。

   そんな主人公の行動を見ていると、彼は、子どものままの心性を持っているように思

   えます。


   

   マイペースのあるがままの感覚。

   ぶかぶかでぼろぼろの穴あきセーターを愛用し、おぎょうぎが悪く、泣き虫。根気強

   くなく飽きっぽい、などの性質と共に、愛想良くどんぐりに声かけをしたり、回復力

   も強い主人公です。

   愛すべき子どもっぽさが憎めません。

   読者の子どもたちが一番笑いを誘われるのは、ねこがどんぐりたちに茶化され、穴あ

   きセーターの歌を歌われる場面です。

   子どもたちは、どんぐりにさえばかにされる、だらしないねこを、安心しておもしろ

   がれるのでしょう。


   

   しかし、本書の主人公は、誰に迷惑をかけているわけでもありません。

   明日を思い患うことなくひとりで暮らし、自分の仕事やスケジュールをマイペースで

   こなしています。

   強がらない彼のだらしなさが潔く、格好をつけない表情や動作もかわいいのです。

   主人公の自分らしさは、読者をゆるゆるとリラックスさせてくれるのではないでしょ

   うか。


   
   

プロフィール

ネッカおばあちゃん

カテゴリー

  ねこ   クリスマス

クリスマス絵本一覧

COPYRIGHT © えほんのいずみ ALL RIGHTS RESERVED.

▲ ページの先頭へ