
まず、この絵本の表紙絵をごらんください。舞台は、犬のワンワンちゃんのパンこう
じょうです。
美味しそうに並んだパンを窓からジーッと見ている猫たちが、ノラネコぐんだんの面々
です。どの猫も、いたずらそうな顔をしていますね!
一方、テーブルで一生懸命パン生地をこねているのがワンワンちゃん。麺棒で、彼
のお手伝いをしているのが、鳩時計の鳩パッポヒ。そしてパンを食べているのが、く
いしんぼうのニワトリ型ロボットマーミーちゃんです。
「パンこうじょう」といっても、パンづくりのコーナーの他に、おいしそうなパンの
並ぶ売り場、それにカフェコーナーまであります。
絵本を開くと、パンの美味しさと楽しさが広がります。
さて、パンを食べてみたかったノラネコぐんだん。
ある夜のこと、8匹は皆ほっかむりをして、「パンこうじょう」へこっそり忍び込みまし
た。
そして、簡単簡単!という陽気なノリでパン作りを始めたのです。
ところが、パンだねが大きすぎてパンが焼き窯におさまらないほどふくらみ、ドッ
カーン!と工場の建物ごと壊れてしまいました。
さあ、その衝撃で、ネコたちはどうなったでしょうか?
工場の隣の住まいで寝ていたワンワンちゃんと、マーミーちゃん、パッポヒは驚い
て、家から飛び出しました。
工場がふっ飛んでも、幸いなことにノラネコぐんだんは、みんな無事でした。
そのうえ、巨大な食パンがこのうえなく美味しそうに焼きあがったのです。
しかし、ワンワンちゃんはパン工場を台無しにしたノラネコたちに、いつものお説教
をしました。
“こんなことをしていいと思っているんですか”
”思ってません“”ニャー“
“では、悪いことをしたと思いますか”
“思います””ニャーニャー“
ノラネコぐんだんは正座し、神妙な顔で反省しています。
ノラネコ8匹のワルかわいい軍団だからこそ、この場面にもユーモアがあります。
絵本を読み聞かせてもらっている子どもたちの中には、ワンワンちゃんのお説教やノ
ラネコたちのセリフをそのまま遊びに取り入れて、笑いころげる子もいます。
粘土あそびのとき、「パンの粘土、コネコネ」と、パッポヒの真似をしてパン生地を
伸ばす仕草をする子もいました。自宅で、ママと一緒によくノラネコパンを作るのだ
そうです。
本作で、美味しくふくらんだ巨大な食パンを外の売店で売る場面は、大勢の読者
の皆さんをとってもハッピーな気持ちにしてくれるでしょう。
しかし、度を越したワルさに対する償いも、ノラネコぐんだんは、しっかりさせられ
たのです。
本当はスキあらば逃げようとするワルかわいいノラネコたちですが、“そうは問屋が
卸さない”ワンワンちゃんの手腕も、みごとなものです。
工場がドッカーンと爆発するような、思いがけないことが起きるのは、遊びに夢中な
ときの子どもたちの心理に似ているので、意外にも、読者にとっては、カタルシスに
なるかもしれません。
しかしノラネコ達は、新たに工場を建て上げる仕事をワンワンちゃんから仰せつか
り、いたずらに対する責任をとらされることになります。
現実には、私たち大人は子どもたちのいたずらにどう対応したらよいか、戸惑う場合
も多いです。しかしこの絵本のように、「いたずらには、責任が伴う」という教訓
を含む作品は、子どもにとっても大人にとっても逸品といえるでしょう。
ユーモアあふれる魅力的な絵本だからこそ、教訓も腑に落ちるのではないでしょう
か。やはり絵と文から生まれる想像力の世界は、限りなく楽しくおもしろいです。