えほんのいずみ

絵本「パパ、お月さまとって!」のあらすじや随想

 この絵本について―エリック・カールの絵本の中から
           「月」と「星」を読む
                                                                 
      
作:エリック・カール・
       
翻訳:もりひさし
 
出版社:偕成社 
   
対象年齢:3歳頃~                  
   
発売日:1986年 12月

          
 はじめに


   夜空が晴れて月や星が見えると、うれしくなります。

   夜空に輝く月や星のストーリィを思いめぐらすなら、絵本作家のエリック・カールを

   挙げないではいられません。

   今回は、秋の夜長に楽しめる絵本として、『パパ、お月さまとって!』と『おほしさ

   ま、かいて!』をご紹介しましょう。すでに多くの子どもたちや読者の皆さんの愛読

   書かもしれませんね。

   
 この絵本のあらすじと随想


   ある晩、女の子モニカは、窓から外を眺めると、お月さまがとても近くに見えまし

   た。早速お月さまと遊ぼうと、外へ手を伸ばしましたが、とても月までは手が届き

   ません。

   だから、「パパ、お月さま とって!」とお願いしました。
   
   するとパパはながーい長いはしごをかついできました。そして、たかーい高い山へ運
  
   んで行ったのです。それから、はしごを山のてっぺんに立て、上へ上へと登って行きま

   した。

   そしてお月さまに、「娘のモニカがお月さまと遊びたがっているんだ」と伝えた
   
   のです。でも「月を持って帰るには、月は大きすぎるなぁ」と、パパ。

   するとお月さまは、「毎晩わたしは少しづつ小さくなるから、ちょうどいい大きさに 
 
   なったとき、連れていってくださいな」と答えました。
 
   そこでパパは、お月さまが手に持てるほど小さくなったとき、モニカのところへお月

   さまを連れて行ったのです。

   何と、うれしいことでしょう。モニカは「パパ、ありがとう!」と大喜びしました。
   
   そしてお月さまを抱きしめたり、高く投げたりして思いきり楽しく遊んだのです。
  
   ところが、日が経つにつれ、お月さまはどんどん小さくなり、ついに消えてしまいま

   した。

   それから少し経ったある晩のこと、モニカは、また夜空に銀色のお月さまが輝いてい
   
   るのを見つけたのです。やがて、月は毎晩大きく、大きくなって・・・

   
        

 随想とまとめ


   絵本『パパ、お月さまとって!』の創作の動機は、作者の娘、サースティンさんの幼

   い頃の願いだったそうです。彼女は3~4歳の頃、夜空にかかる月を見て、「パパ、

   あのお月さまとって!」と言いました。

   すると、パパのエリックは、まず月の大きさや月までの距離について説明したようで
                               
   す。どんなにお月さまをとってあげたくても、難しい現実があることを伝えたかった
 
   からですが、その時の娘さんには理解できませんでした。  

   でも、パパは次の日、サースティンのために、「月の本」のラフスケッチをいくつか

   描いてあげました。

   ところが、彼女は20年以上経ってから、『憂鬱なときに、そのスケッチを見てい 

   たら、気分がとてもよくなった』と書いて、パパに手紙を送ったのです。そこでエ

   リック氏は、たずねてきた出版社の人と相談し、大勢の子どもたちに見てもらえるよう
   
   に、本書を創作することに決めたのでした。

   幼い娘の願いを何とか叶えてあげたいというパパの愛情が、20年以上もの時を経て、

   実現するとは何と素晴らしいことでしょうか。すでに大人になった娘さんは、パパの

   描いてくれたラフスケッチを見て、憂鬱なときでも、その楽しいイマジネーションを 

   想い描き、癒されたのでしょう。

   サースティンさんだけでなく、たくさんの子どもたちにとって、この作品は、パパ 

   のぬくもりに包まれながら月と遊べる、絵本ならではの想像の世界だと思います。

   
  
   下記のURL「偕成社 エリック・カール スペシャルサイト」に詳しい記事があり
 
   ますので、是非ご覧になってください。
 
   https://www.kaiseisha.co.jp/special/ericcarle/about/ 

    
 
   〇この絵本のしかけについて 
 
   さらに本作では、しかけが駆使されています。長いはしごや、高い山、そして満月  

   が、目と手と言葉の想像力で味わえます。 

   子どもにとっては、しかけを縦横に開くのにけっこう指の力が要りますが、見るだけ 

   でなく、しかけを動かしながら読むからこそ、月とパパの愛情の大きさが実感でき 

   て、面白さも増すのではないでしょうか。 

   絵本を通して、月の満ち欠けなどの天文学が楽しく学べるのもうれしいことです。

   では、次に星をめぐる絵本『おほしさま かいて!』をご紹介しましょう。

  

   『おほしさま かいて!』 
        
    
   作:エリック・カール
    
   翻訳:さの ようこ

   出版社:偕成社

   対象年齢:5・6歳~

   発売日:1992月10月
   

   

 この絵本のあらすじと随想

   

   この作品は、エリック・カールが子どもの頃、ドイツ人のおばあちゃんに教わっ

   た星の絵描き歌からヒントを得たそうです。夏休み、エリックが夜寝

   ている間にみた、流れ星の夢もストーリィに加わっているということ。
   
   その夢の中では、最もまぶしい流れ星がエリックめがけて落ちてきました。
    
   ところが星と一緒に舞い上がり、痛いどころかぞくぞくといい気持ちだったのです。
 
   さて、この絵本の中では、『おほしさま かいて!』と頼まれた絵描きが、長い時間を
   
   かけて、大きくてすてきな五角形の星を描き上げます。その鮮やかな色彩とすばらしい

   コラージュは、エリックならではの星です。

   すると今度はその星が、絵描きにおひさまを描くように頼みました。そこで、ぽっか
   
   ぽかのおひさまを描きあげると、おひさまが今度は木を描くように絵描きに頼んだの
  
   です。 

   こうして、次々に、人間や家、犬、猫、鳥、蝶々が絵描きの筆から生まれ、鮮やかな

   色の花々、雲、七色の虹、夜、月も生まれました。  

   最後に描き上げたのが、とってもすてきな八角形の星でした。その時には、絵描きもか 

   なり年老いていました。 

   やがて、絵描きは最後にその星に頼まれ、星と共に旅に出ます。

    

   この絵本は、訳者・さのようこさんが評するように、作品の中で天地創造が成されて

   いるのかもしれません。

   空の月や星だけでなく、私たち人間も絵描きの筆から生まれるのです。作者エリッ

   ク・カールの想像力と色彩感覚が存分に活かされ、命のつながりや創造の喜びを感じ

   させてくれます。宇宙と大自然を生きる、命あるものたちが絵描きの筆から誕生する

   不思議さは、年齢を問わず多くの読者のみなさんを魅了することでしょう。想像力を刺

   激する美しい魔法のようにさえ感じられます。星を描くことを天職とした絵描き。さら

   に、絵描きが星と一緒にどこまでも旅していくことは、永遠への死生観を意味して

   いるのかもしれません。

   ストーリィの最後に、美しく輝く八角形の星!

   この絵本では、八角星の一筆描きが図示されているので、思わず描いてみたくなり

   ます。

   


プロフィール

ネッカおばあちゃん

カテゴリー

  ねこ   クリスマス

クリスマス絵本一覧

COPYRIGHT © えほんのいずみ ALL RIGHTS RESERVED.

▲ ページの先頭へ