えほんのいずみ

絵本「おなかがいたいこねずみ」のあらすじや随想

 この絵本について―病気になった時の、ぬくもりの絵本
                                                                           

文:征矢 清
 
絵:山内彩子
   
出版社:福音館書店(こどものとも年少版通巻359号)     
出版社による対象年齢:2歳~
  
発売日:2007年2月1日
  
現在: 絶版 

                         
 はじめに


   本作は、昔、幼い我が子と一緒によく読んだ絵本です。子どもたち以上に、私自身が

   この絵本を好きだったせいかもしれません。

   先日、本の整理をしていたら、思いがけずに見つかり、懐かしさでいっぱいになりま

   した。ハードカバーにはならなかった絵本なので、失くさないように、だいじに手許

   に置いておきたい一冊です。

   
 あらすじと随想

   ある日のこと、子ねずみはおなかが痛くなり、なき声をあげました。
 
   “いたいよう、おなかがいたいよう”。

    すると母さんねずみが子ねずみのおなかを、そっとさすってあげました。

   そして、“とがりふくろうのお医者さんか、まめじいさんのお医者にいきましょう”

   と言ったのです。
    
   でも、子ねずみが、くちばしのとがっている、ふくろうをこわがったので、まめじい
       
   さんの病院へ行くことになりました。
   
   
   
   母さんが子ねずみをドングリ車に乗せ、押して行くと、車はコロコロと音を立てま

   す。子ねずみは「いたいよう」と訴え続けました。しかし、「ふくろう病院」が近づ
                       
   くと、母さんは“静かに!”と人さし指を口に添えて、その前をそうっと通り過ぎま

   した。でも、まめじいさんの病院が近づくと、子ねずみは安心して、再び大声で痛

   みを表現したのです。

   

   さて、まめじいさんは、子ねずみと同じくらいに体の小さなお医者さんでした。

   でも、子ねずみの喉の奥をのぞきこんで、腹痛の原因を当てたのです。

   “さてはさては、シャンシャンいちごの実を10個以上食べたな。子どもが10個以上

   食べると、ぜったいおなかが痛くなる”と。

   それから、大きな鍋の中で湯気を立てている丸いホオズキの実を取り出し、子ねずみ

   に渡しました。

   暖めたほうずきの実をおなかに当てるのが、まめ病院の腹痛の治療法だったのです。
  
   やがて、子ねずみのおなかの痛みも消え、母さんと一緒に元気に歩いて帰りました。
                     
   
       
   
   

 随想とまとめ


   「おなかが痛い」という症状を訴えるのは、子どもたちに時々あることです。それだ

   けに、子ども読者の深い共感を呼ぶでしょう。

   子ねずみへの優しいスキンシップだけでなく、子どもの心に添ったお医者さん選びにお

   いても、母ねずみは、読者をぬくもりで満たしてくれます。

   子どもがありのままの痛みを表現できるのは、心理的に深い受容に包まれた環境だから

   でしょう。

   

   本作のストーリィは、作者征矢清さんの体験談から生まれたそうです。そのお話が「母
   
   の友」(2004年11月号)「子どもの聞かせる一日一話」に掲載され、さらに、画家山 

   内彩子さんとのコンビで絵本化されたのです。

   山内さんにとっては、初めての絵本だそうですが、ねずみの小さな世界がみごとに擬

   人化され、草花や動物など、自然の素晴らしさも鮮やかに表現されています。 

   丸いオレンジ色のほおずきで、カイロのようにおなかを温める、癒しのストーリィ。

   それは、絵本だからこそ、癒しのイメージと一致するのです。

   この母ねずみのぬくもりは、小さな読者の痛みと不安まで溶かしてくれるでしょう。 

   

   では、最後に、神父・晴佐久昌英氏による「病気になったら」(晴佐久昌英著『恵み  

   のとき』所収、サンマーク出版 )という心の詩をご紹介しましょう。 

   病にある多くの方を励まし続けてきた、ぬくもりあふれる詩です。    

   

   病気になったら  
      作: 晴佐久昌英
          
   病気になったら、どんどん泣こう。
   
   痛くて眠れないといって泣き、

   手術がこわいといって涙ぐみ、

   死にたくないよといって、めそめそしよう。

   

   恥も外聞もいらない。

   いつものやせ我慢や見えっぱりをすて、

   かっこわるく涙をこぼそう。

   またとないチャンスをもらったのだ

   自分の弱さをそのまま受け入れるチャンスを。
 
   

   病気になったら、おもいきり甘えよう。

   あれが食べたいといい、

   こうしてほしいと頼み、

   もうすこしそばにいてとお願いしよう。

   

   遠慮も気づかいもいらない、

   正直に、わがままに自分をさらけだし、
           
   赤ん坊のようにみんなに甘えよう。
 
   またとないチャンスをもらったのだ。
 
   思いやりと まごころに触れるチャンスを。
  
   

   病気になったら、心ゆくまで感動しよう。

   食べられることがどれほどありがたいことか、

   歩けることがどんなにすばらしいことか、

   新しい朝を迎えるのがいかに尊いことか、

   忘れていた感謝の心を取りもどし、

   この瞬間に自分が存在しているという神秘、

   見過ごしていた当り前のことに感動しよう。

   またとないチャンスをもらったのだ。

   いのちの不思議に、感動するチャンスを。

   

   病気になったら、すてきな友達をつくろう。

   同じ病を背負った仲間、

   日夜看病してくれる人、

   すぐに駆けつけてくれる友人たち。

   義理のことばも、儀礼の品もいらない。

   黙って手を握るだけですべてを分かち合える、

   あたたかい友達をつくろう。

   またとないチャンスをもらったのだ。

   神様がみんなを結んでくれるチャンスを。

   

   病気になったら、必ず治ると信じよう。

   原因がわからず長引いたとしても、

   治療法がなく悪化したとしても、

   現代医学では治らないといわれたとしても、

   あきらめずに道をさがし続けよう。

   奇跡的に回復した人はいくらでもいる。

   できるかぎりのことをして、信じて待とう。

   またとないチャンスをもらったのだ。

   信じて待つよろこびを生きるチャンスを。

   

   病気になったら、安心して祈ろう。

   天にむかって思いのすべてをぶちまけ、

   どうか助けてくださいと必死にすがり、

   深夜、ことばを失ってひざまづこう。

   この私を愛して生み、慈しんで育て、

   わが子として抱き上げるほほえみに、

   すべてをゆだねて手を合わせよう。

   またとないチャンスをもらったのだ。

   まことの親である神に出会えるチャンスを。

   

   そしていつか、病気が治っても治らなくても、

   みんなみんな、流した涙の分だけ優しくなり、

   甘えとわがままをこえて自由になり、

   感動と感謝によって大きくなり、

   友達に囲まれて豊かになり、

   天の親に抱きしめられて

   自分は神の子だと知るだろう。

   病気になったら、またとないチャンス到来。

   病のときは恵みのとき。

   

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