えほんのいずみ

絵本「ピアノはっぴょうかい」のあらすじや随想

 この絵本について―緊張する発表会が楽しくなる
           ファンタジー絵本
                                                                 

作・絵:みやこしあきこ
 
出版社:ブロンズ新社

対象年齢:4・5歳頃~

発売日:2012年4月
   
価格:1430円
       
                         
 はじめに


   私は子ども時代から、何かの発表会というと、ガチガチに緊張して気が重くなりまし 

   た。でも、この作品はピアノ発表会で緊張してしまう人をリラックスさせてくれる、

   ワクワクとうれしい絵本です。 

   作者みやこしさんは、処女作『たいふうがくる』(ビーエル出版)でニッサン童話と

   絵本のグランプリ絵本大賞を受賞。二作目『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成

   社)も日本絵本賞大賞を受賞しました。最近は絵童話『ちいさなトガリネズミ』

   (偕成社)が小学館児童出版文化賞ほか、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニュー

   ヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受け、絵本作家として国内外で高

   く評価されています。

   人気の絵本には『これ だれの?』『ぼくのたび』(いずれもブロンズ新社)『のはら

   のおへや』(ポプラ社)などもあります。

   
 あらすじと随想


   主人公は表紙絵に登場する赤いドレスの女の子、ももちゃんです。
 
   もうすぐ初めてのピアノの発表会で演奏するのです。緊張で胸がドキドキし、舞台

   裏で順番を待つ間、何度も自分に、「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」と言い聞かせ

   ました。

   そのとき、足元にすてきな洋服を着たこねずみが現れたのです。

   “あたしたち、発表会してるから、ももちゃんも見においでよ。大丈夫、ももちゃん

   の出番まで、まだ時間あるから”と誘いました。
      
   そこで彼女は、こねずみの後について体をまるめ、舞台袖の小さなドアをくぐり抜け
     
   ました。そこは、何とねずみの世界だったのです。小さな客席にはねずみたちがいっ
   
   ぱい座っています。
   
   そしてどんちょうが開くと、舞台では、驚くようなねずみのサーカスが始まりまし

   た。その次はあざやかな腕前の手品。その後、オーケストラの演奏にあわせて、不揃
                       
   いのダンス。不揃いでも、観客も演者も皆、にぎやかに楽しんでいます。
    
   最後はももちゃんを誘ったこねずみの歌でした。でも、その子がとても不安そうな
       
   ので、ももちゃんはこねずみのピアノ伴奏者として、一緒に舞台に立ってあげたの

   です。
       
   ところが、ふと気がつくと、そこはももちゃん自身の本番の舞台!

   さあ、彼女のピアノ発表はどうなるでしょうか。ドキドキです。
       
   帰り道でおかあさんは、ももちゃんに・・・。 

   
       
   
   

 随想とまとめ
  

   作者のみやこしさんは、子ども時代のピアノの発表会で、人前での演奏は苦手で

   した。でも、劇場の雰囲気や舞台裏のつくりなどにとても興味を惹かれたそうです。

   さらに大人になってドイツに一年ほど住んだとき、ベルリンのオペラ座があまりにも

   すばらしかったので、絵本を創作するなら、いつかこのような劇場を描きたいと思い

   ました。その願いを実現できたのが、この『ピアノはっぴょうかい』です。

   

   作者がインタビュー(ミーテカフェインタビューVol .101みやこしあきこ)で述べるよ
  
   うに、この絵本では、ファンタジーの世界が設定されています。ねずみの異世界へ入 

   り込むことにより、ももちゃんは、ねずみたちの舞台を見る観客になったのです。 

   つまり当事者という役割から解放され、ねずみたちの舞台を思いきり楽しんで、リラッ 

   クスしました。その後、主人公はこねずみのピアノ伴奏役で舞台を経験し、現実の自 

   分の本番に臨めたのです。  

   

   さて、作者の熱意に驚くのは、この絵本の制作のために作者自身が、自宅で実際にね 

   ずみを飼い始めたことです。その甲斐があり、絵本ではねずみたちがこのうえなくリア

   ルに描かれました。 
                                                                 
   舞台のねずみも観客席のねずみも、臨場感がみごとなのです。

   作者が絵本を創作するときいつも心がけるのは、文章を読まなくても、子どもたちが

   絵で物語を理解できるよう、絵に情報をできるだけたくさんていねいに入れること

   だそうです。

   ですから、この作品の場合も、一匹一匹ねずみの表情に工夫がこらされています。
           
   読者の楽しみも尽きません。 
 
   ねずみ自身の舞台発表は、けして上手ではないのに、彼らの楽しんでいる様子が見 
   
   え、それが主人公ももちゃんをリラックスさせ、楽しませてくれたのです。 

    

   昔、大学時代の友人が地域のオーケストラに入り、趣味でオーボエを吹いていまし

   た。そのオーケストラで出会ったご主人と結婚されたので、生まれたお嬢さんも幼

   児期からヴァイオリンを習い、よく色々な発表会で演奏していました。 

   忘れられないのは、友人が、いつもお嬢さんの発表の前に、「楽しんで、弾いてきて 
   
   ね。楽しくね。」と言った言葉でした。緊張しがちな発表会も“楽しんで、弾いてき 

   てね。”と言われると、リラックスできたのかもしれません。お嬢さんは、“聴いてく

   れる人のために、積極的に楽しく弾こう”と思えたようです。 
 
   その後、彼女は音楽の道に進み、やがてプロのヴァイオリニストになりました。
 
   

   発表会に臨む皆さんには、『ピアノはっぴょうかい』でねずみたちのファンタジーに

   出会い、是非、発表会を楽しんでいただけたらと思います。

   みやこしさんの作品は、『もりのおくのおちゃかいへ』などの絵本にも、魅力的な

   ファンタジーの世界が登場します。ファンタジーの世界で主人公の苦境が昇華される

   様子を見て、読み手もリラックスの糧が得られるのではないでしょうか。

    

   ところで、親しい友人の伸枝さんが、ご自身の誕生日に「感謝の心」や「君は愛

   されるため生まれた」他、賛美のピアノ弾き語りをyoutubeにアップされました。
   
   URLは、https://www.youtube.com/watch?v=izxA9s0F5oM(感謝の心@バー)
 
   https://www.youtube.com/watch?v=akgw-qGOAqM(君は愛されるため

   生まれた@バー)

   是非、伸枝さんの澄んだ歌声のすてきなピアノ弾き語りをお楽しみください。

   

   

   

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