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絵本「たまねぎぼうや」のあらすじや随想

 この絵本について―自分の威力に気づいた可愛いヒーロー
                                                                 

絵と文:河原まり子

出版社:至光社

おおよその対象読者年齢:2・3歳~
    
出版年月日:2021年9月15日

定価:1320円(本体1200円)
           
                         
 はじめに


   これほど可愛い玉ねぎはないと思えるほど、河原さんの描いた「たまねぎぼうや」は可

   愛い主人公です。

   この絵本では、主人公だけでなく登場する皆がどこか可愛らしい。

   ドキドキハラハラするストーリィだけれど、子どもも大人もワクワク楽しくなります。

   子どもたちの食育にも役立つでしょう。

   作者河原まり子さんの作品には他に『グルグルー ぼくのだいじなおもいで(偕成社)

   刊)『なかまってさいこうさ』(至光社刊 品切れ中)『はじめてのおわかれ』(佼成

   出版社 品切れ中)などもあります。

   
 あらすじと随想


   いつもゆっくりのんびりなたまねぎぼうやが主人公です。 

   お母さんからは「はやく、はやく」と言われますが、友だちのトマトやピーマン、
 
   きゅうりやレモンのあとを付いて行くのがやっと。

   そんなある日、向こうから大きな怪獣がやってきました。皆は素早く気づいて逃げたの

   ですが、たまねぎぼうやはよそ見をしていたので気づきませんでした。
   
   そのうえ怪獣の怖さを知らずに「君、だあれ?一緒に遊ぼうよ」と言ってしまったので
   
   す。するとおなかをすかせた怪獣はぼうやをだまして、口の中へ入れました。

   万事休す!
     
   ところが強いはずの怪獣は、涙を流しながらぼうやを吐き出して逃げて行ったのです。
   
   さあ、なぜでしょうか?

   それからというもの、たまねぎぼうやは・・・。
                       
   ほっこりするフィナーレは是非絵本でご覧ください。

   
   

 随想とまとめ


   さて、この絵本の子ども読者は、お母さんから多かれ少なかれ「早く、速く」とせか

   される日常ではないでしょうか。ですから、たまねぎぼうやに共感することも多いで

   しょう。

   彼は無垢で怪獣の怖さも知りませんでした。

   怪獣を前にして転んでしまう自分を「なんてドジなんだろう」と卑下してたら、さらに

   怪獣にだまされてしまい危ない目に遭います。

   ですから、子どもたちはドキドキハラハラしながら、主人公を応援するのです。彼が

   食べられそうになると怪獣に向かって「ダメ―ッ!」と大声で止めに入ります。

   ところが意外な展開が待っていました!

   主人公は戦わずして怪獣に勝利したのです。
   
   怪獣はぼうやを吐き出し、涙をこぼして逃げて行ったのですから、子どもたちは

    「ヤッター!」と拍手喝采です。

    たまねぎぼうやは弱そうに見えてもちゃんと自分を守れるし、怪獣が逃げ出すほど不

   思議な力の持ち主だったのです。

   でも、本人はそれを自覚していませんでした。

   友だちが彼を見直す場面で、照れてしまう初々しさも彼の魅力です。

   

   読者の子どもたちは主人公の恐怖を追体験した後、主人公が不思議なパワーで怪獣を

   退散させる本書を、何度でも読んでもらいたがります。

   図書館のお話会で知り合った3歳のカンちゃんもこの絵本が大好き。お話をすっかり
  
   覚えてしまって、双子の弟のターくんと読み合いっこをしています。ふたりで『たま
             
   ねぎぼうや』を読んだり遊んだりしてくれるので助かると、お母さんは話していまし
   
   た。

   ある日、彼らが「たまねぎぼうやね、ユウカアイル」と何度もいうので、たまねぎぼう

   やに名前をつけたのかと思ったら、玉ねぎパワーの素は「硫化アリル」だとママに

   教わったそうです。「ほう!君たち、『化学者(ばけがくしゃ)』だね!」と驚いたら

   「オバケじゃないよ!ユウカアイルだよ!ユウカアイルはは怪獣が泣くくらいすごい

   よ!」と笑っていました。

   

   玉ねぎは子どもたちの大好きなハンバーグにもオムレツにもスパゲティミートソース 
 
   にも入っていますし、魅力満載です。

   この絵本は玉ねぎだけでなく、色々な野菜や果物の個性や長所を話し合ったり、見つけ 

   たりする食育のチャンスにもなるでしょう。
  
   

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