えほんのいずみ

絵本「ぶたのたね」のあらすじや随想

 この絵本について―木にぶたが実るユーモラスな絵本

作・絵:佐々木マキ

出版社:偕成社

出版年月:1989年10月

定価:1,430円(本体 1,300 円)

 
 はじめに


   本書は、すでにファンの多い、「ぶたのたね」でぶたが実るという奇想天外な絵本で

   す。きっと幼児さんからおとなの皆さんまで笑いに包まれるでしょう。

   作者・佐々木マキさんの絵本の作品は『こぶたのかばん』(金の星社)、『ねむいね

   むいねずみ』シリーズ(PHP研究所)、『やっぱりおおかみ』『まじょのかんづめ』

   『おばけがぞろぞろ』『はぐ』『へろへろおじさん』(以上、福音館書店)『いない

   いないばあさん』『あかいけいと』『あおいともだち』(以上、偕成社)『ムッ

   シュ・ムニエル』シリーズ、『ぼくがとぶ』『ぶたがとぶ』(以上、絵本館)その他

   数多く出版されています。

   
   
 あらすじと随想


   主人公はぶたよりも走るのが遅いおおかみ。だから、ぶたをつかまえたことがなく、

   「ここまでおいで、あっかんべー」とばかにされる始末でした。

   悔しくて泣いていると、きつね博士が通りかかったので“一度でいいから、ぶたを腹

   いっぱい食べてみたい”と、相談しました。

   すると、渡されたのが、博士の発明したとっておきの薬。

   なんだか怪しい感じがしたけれど、おおかみは言われた通り「ぶたのたね」を土に埋

   め、成長剤をかけました。


   

   すると一週間後に大木になり、驚いたことにぶたが鈴なりになったのです。

   「やったあ」おおかみの喜んだこと!

   ところが地面が揺れ、ぞうの軍団が走ってきたのです。

   マラソン大会でした。

   すると木にくっついていたぶたが、ボトンボトンと地面に落ち、ぞうの後について

   走って行ってしまいました。

   おおかみはすぐに追いかけましたが、もちろん追いつけません。

   しかし、木の根元に1匹だけぶたが残っていました。

   そこでおおかみは、これ幸いとつかまえようとしたのです。

   ハラハラドキドキのフィナーレは、是非絵本でご覧ください。


   
   
 随想とまとめ


   佐々木マキさんの作品はナンセンスでシュールな絵本が多いですが、この『ぶたのた

   ね』シリーズはシンプルでユーモアいっぱい。『またぶたのたね』『またまたぶたの

   たね』『あやしいぶたのたね』と続編があります。

   一般的にいえば強者のはずのおおかみが、この絵本ではかっこ悪い弱者として登場

   し、本来の強者をめざしては失敗するのですから、その逆転劇が笑いを誘うのかもし

   れません。

   しかし、おおかみが全然落胆したりあきらめたりしないので、読者の方が、時にアイ

   ロニーを覚えたり、励まされるのではないでしょうか。

 
   

   ところで、アメリカの絵本作家、故・アーノルド・ローベルさんご夫妻による『りん

   ごのきにこぶたがなったら』(評論社刊)も、木にこぶたがなる作品です。しかし、

   こちらはナンセンステールではありません。


   
   
   
   『りんごのきにこぶたがなったら』
    アニタ・ローベル絵 アーノルド・ローベル文 佐藤涼子訳 (評論社)

    

   次のようなストーリィです。
 
   あるお百姓さん夫婦がこぶたを沢山買いました。

   だんなさんがおかみさんに協力して、ちゃんと世話をすると言ったからです。ところ

   が、怠け者のお百姓さんは約束を守らず、毎日ぐうぐう寝てばかり。

   そして“庭にこぶたが咲いたら・・。りんごの木にこぶたがなったら・・。空からこ

   ぶたがふってきたら。手伝うよ!”と奇想天外な条件を出して、相変わらずぐうたら

   寝ていたのです。

   しかし、おかみさんは、お百姓さんの出した条件を全部やり遂げました。

   表紙絵のように、りんごの木にこぶたをならせたりもしたのです。

 
   

   ところが、お百姓さんときたら、それらを全部無視して怠け続けました。

   すると、機知に富んだおかみさんは、けんかも家出もせずに、やんわりと逆襲したの

   です。

   どうやってお百姓さんの怠け癖を改心させたかは、絵本を読んでのお楽しみ!

   ユーモアとウイットに富んだご夫婦のこの絵本は、ハッピーエンドなので心があたた

   まります。


   

   両作品とも、ぶたをめぐって主人公がキリキリ舞いするけれど、コミカルでユーモア

   いっぱいの傑作絵本です。

   木にぶたがなっている絵を見ただけでも、愉快になるのではないでしょうか。


   

   『りんごのきにこぶたがなったら』のストーリィを書いた故・アーノルド・ローベル

   さんは、幼年童話の傑作「がまくんとかえるくん」シリーズ(『ふたりはともだち』

   『ふたりはいっしょ』『ふたりはいつも』『ふたりはきょうも』、文化出版局刊)で

   およそ40年もの間、人気を博してきた絵本作家でした。

   『ふたりはともだち』の中の「おてがみ」は、小学校の国語の教科書に掲載されてき

   ましたので、きっと懐かしく思われる読者の皆さんも多いことでしょう。


   
   

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